ブラジル国家衛生監督局(ANVISA)による事前承認制度の廃止
長い間にブラジル特許制度の特徴的な課題となったブラジル国家衛生監督局(ANVISA)による事前承認制度は改正法により廃止されました。今回の改正法案は、2021年3月に公布された暫定措置令(MP[i])1040/21(MP1040/21)に基づく法案であり、 開業促進などのビジネス環境の改善を主な目的とするものでした。この暫定措置令1040/21には、医薬特許付与の要件として、ブラジル国家衛生監督局(ANVISA)による事前承認制度を規定しているブラジル産業財産法第229-C条の廃止も含まれていました。なお、議会において暫定措置令1040/21の立法化について検討された際に一部修正されたため、転換法案15/2021(PLV 15/2021)となりました。
ブラジル産業財産法第229-C条に規定されているブラジル国家衛生監督局(ANVISA)による事前承認制度とは、ブラジル特許庁(INPI)に出願された医薬品関連の特許出願の場合、ANVISAによる事前承認手続きのためにANVISAに送付され、ANVISAが公衆衛生への影響について審査し、事前承認の審査後、ブラジル特許庁に再び送付される制度であす。事前承認が受けた場合、ブラジル特許庁において特許要件に関する実体審査が行われます。一方、事前承認を受けられなかった場合、ブラジル特許庁は事前承認を受けていないことを理由として出願を拒絶します。当該制度は2001年のブラジル産業財産法の改正により導入され、製薬会社の大きな負担となっていました。
2021年6月23日に下院議会において暫定措置令1040/21が承認され、法案に転換されました。その後、8月4日、上院議会が同法案を可決したものの、法案の一部が改訂されたため、改めて下院議会に送付されました。8月5日、下院議会は、上院議会が提案した改訂案を却下し、8月6日にボルソナロ大統領による裁可のために送付されました。その後、ボルソナル大統領が同法案を裁可し、8月26日に第229-C条の廃止を定めた第57条を含む、法律14.195/21が成立しました。同法律により、医薬品関連の特許出願の際のブラジル国家衛生監督局(ANVISA)による事前承認制度が廃止されることとなりました。

ブラジル特許庁は、8月31日に交付した公報[ii]において、法律14,195/2021による第229-C条の廃止に伴う医薬品関連の特許出願に関する手続きを公表しました。その内容は以下の通りです。
- 2021年8月27日以降、ブラジル特許庁はANVISAに医薬品関連特許出願を転送していない。
- ANVISAから返却された出願については、第229-C条が廃止されたことを示す通知コード7.7が交付され、その後、通常の審査手続きに戻る。
- 第229-C条の廃止前にANVISAによる事前承認の手続きが完了していた出願は、8月23日にブラジル特許庁に転送され、当該出願について従来通りに事前承認(通知コード7.5)または事前承認拒否(通知コード7.7)の通知コードが交付される。
- 2016年12月31日までに行われた出願で、バックログ解消計画に含まれている出願は、通常通りに「Preliminary Office Action」に関する通知コードの6.21または6.22が交付される。
しかしながら、ANVISAにおいて事前承認手続き待ちとなっていた出願の全てがブラジル特許庁において審査が行われようになるまでには少し時間かかるものの、この改正は製薬業界にとって大変ポジティブな情報といえます。日本企業に関しては、ANVISAにおよそ70件程度の出願が残っていたが、近いうちにブラジルの事前承認制度から逃れることができるようになります。
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[i] 暫定措置令(MP)とは、緊急性のある場合に限り、大統領が独自に発令できるものであり、法律と同様の拘束力を有します。なお、暫定措置令は、大統領による発令後、議会において立法化に関する検討が行われなければならない。
[ii] https://www.gov.br/inpi/pt-br/central-de-conteudo/noticias/inpi-divulga-procedimentos-apos-extincao-da-anuencia-previa-de-patentes-farmaceuticas
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