特許期間の調整(PTA)に関する最近の判決
4 月 13 日,第 1 巡回区連邦高等裁判所(TRF-1)の第 5 パネルは,ノボノルディスク・ファーマシューティカル・ブラジルが請求した 2 つの特許の期間延長を否定した。この決定,2021 年にブラジル特許庁(INPI)が遅延した場合の登録期間の延長を否定したブラジル連邦司法最高裁判所(STF)の判決に続き,TRF-1の合議体による初めての判決である[i]。今回の事件では,ノボノルディスクは2つの特許について7年と12年の延長を要求した。問題となった有効成分は,糖尿病と肥満の治療に使用されるOzempicとRybelsusという商品名の医薬品に使用されている。当該訴訟は,ノボノルディスク社の請求が下級審で却下されたため,同社がTRF-1に上訴していたものであった。
TRF-1での口頭弁論において,ノボノルディスク社は,同社の特許はINPIから大幅に遅れて,有効期限に極めて近い日付で付与され,この付与の遅延によりノボノルディスクはもはや合理的な独占期間を持つことができなくなった,と主張した。この訴訟のアミカスキュリエである研究製薬産業協会(Interfarma)は,ブラジル産業財産権法第40条補項を違憲としたブラジル連邦司法最高裁判所の判決に基づき期間延長の請求をすることはできないと主張した。
同じくアミカスキュリエであるジェネリック医薬品メーカーのEMSは,期間延長を請求することはブラジル連邦司法最高裁判所の判決を軽視していることになると指摘した。EMSは,対象となっている特許の1つが2024年に失効すること,当該特許が使用されている医薬品が薬局で約1,000レアルで販売されている高額な薬であることを指摘した。また,アミカスキュリエであるブラジル国内資本研究産業会(Grupo Farmabrasil)は,ノボノルディスクが権利以上の期間を求めていると主張した。
本件を審理した報告裁判官は,ノボノルディスクの特許期間延長請求を却下した。同裁判官は,保護は一定期間与えられるべきであるとしたものの,特許保護がなければ,一般的な医薬品は平均73.4%の価格低下をもたらすことを判決において指摘した。同裁判官は,ブラジル連邦司法最高裁判所の判決を引用し,第三者の遅延によって損害を受けることになるという製造業者の主張は,より手頃な価格で製品を提供するという社会的利益に基づくものであるべきだと述べた。同裁判官は,企業の投資の償還は社会的利益の前では二の次になると考えているようである。
一方,3月27日,第9巡回区連邦高等裁判所は,ブリストル マイヤーズ スクイブ(BMS)社に有利な仮処分命令を出し,358日間の特許期間を延長することを認めた[ii]。当該遅延は,ブラジルの衛生監督局であるANVISAに起因するものとされた。
本件において,第9巡回区連邦高等裁判所の裁判官は,今回の問題が,ブラジル連邦司法最高裁判所の判決に抵触する特許期間の延長に関するものではないことを明らかにするとともに,今回の事件においては,民事責任の観点から関係者の権利を確保するための最善の方法を検討することに焦点を当てていた。本件では,裁判官は,規制当局が遅延を引き起こした期間のみ特許保護を延長する合理的な基準を,原告が提示していると判断した。したがって,裁判所は,関係する規制機関の提供する情報を考慮しても,原告が示した全期間を必要な保護期間として設定する一方,遅延に対する特許権者の関与は最小限であったことを指摘した。
[i] 訴訟番号:1086937-78.2021.4.01.3400
[ii] 訴訟番号:1005786-56.2022.4.01.3400
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