ブラジルにおける強制実施権の議論・マンジャロおよびゼップバウンドについて
2026 年3 月9 日,ブラジル連邦議会下院は,医薬品マンジャロ(Mounjaro)およびゼップバウンド(Zepbound)の特許に対する強制実施権を認める法案について,緊急審議手続きを承認し,委員会審査を省略して本会議に付託した。本提案は,糖尿病および肥満症治療へのアクセス拡大と医療費負担の軽減を目的とした政策的目標の一つとして位置付けられている。
これに対し,製薬業界は,当該措置が知的財産権の保護を弱体化させ,医薬品分野における研究開発投資のインセンティブを損なう可能性があることを指摘している。さらに,特許存続期間の延長を可能にするPatent Term Adjustment(PTA)制度の導入に関する議論も並行して進められており,公衆衛生上の要請と企業利益との間に存在する緊張関係が一層顕在化している。
一方,連邦議会下院では,2026 年初頭に提出された法案第160 号が審議されており,同法案は,公益上の理由に基づく特許の一時的停止を認める内容となっている。本法案は,2007 年の抗HIV薬に対する強制実施や,2021 年の新型コロナウイルス感染症対応における例外的措置といった国内の先例を踏まえたものである。
業界団体であるSindusfarma およびInterfarmaは,これらの立法動向に対して強い懸念を表明し,規制の安定性やイノベーションへの悪影響を指摘している。また,保健省も本提案に対して慎重な姿勢を示している。このような状況の下,現在進行中の立法に関する議論は,医薬品へのアクセス,経済的持続可能性,ならびに知的財産権保護のバランスをいかに図るかという課題の複雑さを浮き彫りにしている。
出典:OlarteMoure
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