ブラジルにおけるSEP訴訟・パナソニック対HMDの事例
2026 年4 月17 日,リオデジャネイロ州司法府第6 商事裁判所は,パナソニックとHMD との間の訴訟において仮処分命令を発令した。本訴訟は,HMD が販売する携帯電話が,パナソニックが所有する特許PI 0305710-0(LP-SBR 機能)で主張されている発明を組み込んでいることによる特許侵害を主張するものである。同命令書では,LOWPOWER SPECTRAL BAND REPLICATION(「LP-SBR」)技術は,AAC 規格のプレミアムかつオプションの機能であり,低消費電力で高品質なオーディオ再生を可能にするものであるが,携帯電話が機能するために必須ではないと記されている。
さらに,パナソニックは,HMD が,基本機能に影響を与えることなくいつでも無効化できるにもかかわらず,特許取得済みであることを承知の上で,当該機能を意図的に有効にしておくことを選択したと主張している。また,HMD は,当該特許技術を使用する携帯電話を最近発表しており,まもなくブラジルでもこれらの侵害デバイスを発売する計画であったと主張している。このため,差止に関する仮処分命令が必要であると主張した。
これらを考慮し,ビクター・トーレス裁判官は,本事件において,専門家デビッド・モウラが作成した予備的な専門家の意見書に基づき,差止請求に対する仮処分命令を認めた。
本件において,HMD は,パナソニックから直接ではなくVia LA プールを通じて提示されたライセンス提案はFRAND(公正・合理的かつ非差別的)に該当しないと主張した。ビクター・トーレス判事はこの主張を退け,FRAND の約束を遵守するために二者間ライセンスが必須であるという要件はないと結論付けた。同判事は,なぜHMDが二者間でのライセンスのみを受け入れるのかを正当化する説明責任はHMD 側にあり,HMD はその説明責任を果たせなかったと強調した。
さらに,ビクター・トーレス判事は,裁判所がFRAND の価値を決定する可能性についても否定的な判断をした。判事は,「係争中の権利の金銭的価値を実証することは不可能であり,ましてや市場環境における合理性や非差別性の変動に関する肯定・否定の確実性の範囲を示すことなどなおさら不可能である」として,これが裁判所間で極めて議論の分かれる問題であることを指摘した。
ビクター・トーレス判事は,「裁判官は,当事者の意思に反して他の条件を受け入れるよう強制することはできず,ましてや割引を認めるよう強制することはできない」と述べた。さらに,同判事は「もし判決の結果,実施者が当初から支払うべき金額を単に支払うだけになるのであれば,この訴訟手続きは,本来常に支払われるべきであった支払いを,おそらく数年にもわたって遅らせるだけの役割を果たしたに過ぎない。したがって,司法判断の波及効果や,この種の行為を助長することによるモラルハザードを考慮すれば,ビジネス界が重要視する法の経済分析の観点からも,改めて申し上げるが,このような手続きの採用は許されない。」と論じた。
こうしてビクター・トーレス判事はパラダイムシフトを提案した。数値的な回答を提供するのではなく,提案の背後にある論理の正当性を分析し,認識論的な回答を試みるべきであるというものである。同判事によれば,「FRAND 条件とは,ライセンサーの合理的かつ商業的な論理の範囲内で合理的に正当化され,かつ市場のいかなる主体にも利益をもたらしたり害を与えたりすることを目的としない条件である。」としている。
最後に,本判決において,HMD の行為が先延ばしを目的としたものであることを強調し,このような戦術は,特許侵害者によく見られるものであり,裁判所が断固として対処すべきであると指摘した。
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