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ブラジルの特許権存続期間の特例措置の違憲訴訟・仮処分の判決について
現在、2021年4月時点で、連邦最高裁判所 (STF)は、ブラジル特許制度の特徴となる特許権存続期間の特例措置が違憲か否かについて判断しているところです。本件の違憲訴訟は2016年にブラジル共和国検事総長によって提訴されたものであり、本件の違憲訴訟の背景については前の投稿にて説明しましたので、ご関心がありましたら、ご確認ください。
本件の争点は、ブラジル産業財産法の存続期間の特例措置が第 40 条補項は違憲か否かということです。第 40 条補項によると、特許付与までに 審査が10 年を超えた場合には、特許権存続期間の満了日が付与日より10年後までに自動的に延長されるとしています。具体的には、特許出願日から 20 年間、あるいは、特許発行日から 10 年間のいずれか長い方まで特許権が存続することになります。
第 40 条補項の違憲訴訟が4月7日に審理される予定でしたが、現在、審理は4月14日に延長された状態になりました。しかし、4月7日に違憲訴訟の報告担当の裁判官(Dias Toffoli判事)が第 40 条補項の違憲審査について自分の違憲を公表したとともに、2021年2月24日にブラジル共和国検事総長が請求した仮処分について判断しました。仮処分の請求を受付する根拠としたはコロナ過の問題として指摘されました。それは、もし仮に違憲が認められた場合、その時点で特許存続期間が満了されることとなる医薬特許が存在するので、仮処分の検討が必要との見解です。 実は、仮処分の判決文において、日本の製薬会社である富士フイルムホールディングス傘下の富山化学工業が製造する「ファビピラビル」が一例として取り上げられました。本件は、もともと審理開始は2021年5月26日に予定されていましたが、既に仮処分の請求が出され、今回の違憲審査の影響をコロナ問題に直接に与える可能性が高いため、審理が2021年4月に前倒しされることとなりました。
仮処分の判決と共に Dias Toffoli判事は報告担当としての意見を公表しました。それによって、86頁までにも及ぼす判決文(ポルトガル語の原文はこちらにてダウンロード可能)には、 Dias Toffoli判事が存続期間の特例措置が第 40 条補項は違憲である見解を説明しました。
Dias Toffoli判事の意見ではブラジル特許庁の審査遅延と特別期間を定めている第40条補項には関係があるという見解を示しました。Dias Toffoli判事によると、特許の保護の憲法上の根拠となる憲法第5条(XXIX)には、特許の保護は「社会的な利益および国の技術的・経済的発展を考慮して」、「産業上の発明を、完成した発明者にその利用のための一時的な特権を保障しなければ」なりません。これを踏まえると、憲法上では「社会的な利益」も「国の技術的・経済的発展」も検討しなければならないため、特許権は完全に私的な財産物として認めるべきではないとされました。
それに照らして、Dias Toffoli判事にとって第40条補項制度は存続期間の特別起算方法ではなくて、存続期間延長の制度として解釈すべきのことです。また、第40条補項に基づいて起算された存続期間は付与査定日まで存続期間の満了日を理解することができませんので、 第40条補項はブラジルの特許制度に不安定を与えると解釈されました。不安定な存続期間延長ですので、 第40条補項制度 は、法的安全性に反して、過剰な期間の独占権を与えるものです。それによって、憲法上で保護されている「行政の効率性の原則」(憲法第37条)、「経済秩序の原則」(第170条)、「健康に対する基本的権利」(第196条)が違反されているという見解です。よって、 第40条補項制度による存続期間は、医薬品へのアクセスに関して、国際的なシナリオと比較してブラジルにとって大きな不利益が生じているとされました。
国際的なシナリオの点では、比較法の検討について報告担当の裁判官がサンパウロ大学がリードする「Grupo Direito e Pobreza」(直訳すると「法と貧困問題グループ」)という学者のグループが提出した意見書に大きく影響を受けているといえます。このグループがアミカス・キュリエには、比較法の調査としてPatent Term Extension制度、Patent Term Adjustment制度、およびSupplementary Protection Certificates制度と第40条補項を比較しました。その調査結果により、自動的に適用されるのは第40条補項の大きな問題というのが報告担当の裁判官の意見です。
現行の産業財産法の立法過程を分析したところ、最初の法案には第40条補項が含められていなかったという指摘があり、後に条文が追加されたにも関わらず、追加された内容が十分に議論されていなかったという経緯がありました。報告担当の裁判官によると、第40条補項の追加は、立法当時審査遅延があったという主張がされたにも関わらず、ブラジル特許庁の審査遅延と旧法で保護されていなかった医薬発明は、保護対象に含まれたていたとのことです。すなわち、ブラジルがTRIPS協定によって可能とされた発展途上国に融通される権利を利用しなかったことが、現在のブラジル特許庁の審査遅延の理由という指摘です。
また、どうやら、報告担当の裁判官の感覚では、第40条補項制度があることで、出願人が意図的に審査を遅らせることが可能になるという判断が判決に含められています。つまり、「a pending application is better than no patent at all」という戦略が、一般的に全世界の出願人の戦略であるという考えです。
Dias Toffoli判事にとって、ブラジル産業財産法第44条の関係で、損害賠償の請求権が日数を遡ることになるため、特許が付与される前にも市場に影響を与えています。一方で、救済となる第44条と第210条により、審査遅延があった場合でも出願人・権利者には不利がないという意見と共に、 第40条補項の必要性がないとという意見が挙げられました。
その理論に基づいて、第 40 条補項が違憲であるという意見を明確にした上で、仮処分として医薬・製薬・メディカルデバイスに関する特許について最終判決が下されるまでに第 40 条補項が適用されないと命じました。そして、最終判決として、Dias Toffoli判事は、第 40 条補項の違憲を認める上で(イ)現在、違憲の主張が含めている訴訟中の特許の全件、および(ロ)医薬・製薬・メディカルデバイスに関する特許の全件について違憲の遡及効を、連邦最高裁判所(STF)に提案しました。
それに、2021年4月8日、Dias Toffoli判事が前日に出した仮処分の判決について追加の説明を公報(ポルトガル語の原文はこちらにてダウンロード可能)に公表しました。特に、仮処分の判決の下で第40条補項の拘束力が無効にされた範囲は、医薬・製薬・メディカルデバイスに関する特許出願のみということです。つまり、2021年4月8日以降、少なくとも違憲訴訟の判決が下されるまでに、審査が10年以上かかったとしても、医薬・製薬・メディカルデバイスに関する分野の特許出願であれば、第40条補項に基づく存続期間(つまり、付与日から10年間)を与えることは不可能です。改めて、報告担当の裁判官の提案は少なくとも医薬・製薬・メディカルデバイスに関する特許の全件について違憲の遡及効となるため、全件の存続期間を修正することを提案しました。
連邦最高裁判所(STF)の他の判事の意見を読み取れることが極めて困難ですので、最終判決に関する予想を付くことが難しいです。しかし、新しい情報があり次第、引き続き投稿します。ご質問がありましたら、お気軽にご連絡ください。
連邦裁判所、BRPTOに対する事前の異議申立てのないのに商標権取消し請求を認める
2015年4月6日、リオデジャネイロ連邦裁判所は、訴訟上の商標権無効の請求に対して民事の一般原則に基づき判決を下したこを広告した。
連邦裁判所は、原告側がそれまで商標権の取消しを求める行政救済措置を一切行わなかったにもかかわらず、掛かる商標権無効請求を認めた。
今回の原告である日本企業BANDAI NAMCO社(以下「原告」という)は、2013年に被告GHASSAN ALI NAHLE社(以下「被告」という)及びBRPTO(ブラジル特許庁)を相手取り、GHASSAN ALI NAHLE社2006年に出願され、登録になった結合商標「TEKKEN TEC」の商標権3件につき、商標権の移転(譲渡)又は無効を主張し訴訟を起こしていた。
2009年、原告は「TEKKEN」という商標を第9類、28類、41類について出願を提出した。しかし、ブラジル特許庁は、その後2011年に登録になった被告の先願商標に基づいて、原告の第9類の出願を拒絶した。
原告は、被告が2006年に出願したときよりずっと前、20年以上前から「TEKKEN」という名称を使用していることを主張し、被告の商標登録の無効を訴えた。それによって、原告が根拠にしたのは工業所有権法9.279/96法、第124条17項および23項ならびに第126条、そしてパリ条約第6条である。
訴訟ないに意見を出したところ、ブラジル特許庁は原告の請求を認めた。しかし、ブラジル特許庁は、原告が掛かる商標に対して可能であったはずの行政救済による異議申立てや無効請求がされていなかったことを指摘した。
Felipe Bittencourt Potrich判事は、「TEKKEN」という商標の強さと、1994年から続く原告よる商標の強化を実質的な証拠として認めた。
原告は、ゲーム機やその他電子ゲームの開発したとして世界的に知名度のある会社である。
同判事によれば、「TEKKEN」という標章の知名度は原告BANDAI NAMCO社が単独で築き上げたものであるという理解の下、原告が単独でこのコンピューターゲームを制作・開発したということは明確であるとした。
また、被告の商標「TEKKEN TEC」 の一部である「TEC」は原告の商標「TEKKEN」と区別できるほど十分な識別力がなかいと示唆した。
判事は原告側商標は商標法とソフトウェア保護法との関連性があると結論づけた。
また、判事いわく、工業所有権法は著作権で保護されて、混同や関連性を引き起こす名称の商標登録を阻止する役割を担っているとのこと。
それ故、判事の見解では、被告の商標は原告の製品(ソフトウェア)を確実に連想させているとして、ブラジル特許庁で被告の商標出願は拒絶するべきであった。
上記で述べた事実と裁判内容に関する議論も興味深いのだが、今回の最も重要なポイントは、裁判所が商標の無効を認めたことである。これは商標の出願人および権利者にとって意味のある、興味深い判例である。
本件の特徴は、ブラジル特許庁に対する異議申立および無効審判を欠いているという事実は裁判所での審議において問題とならないと裁判所が明示したことである。
裁判所は、行政上の救済措置を行わなければ商標権の無効訴訟を提起することができないというのがそれまでの通説であることを認めた。
しかしながら、今回の事実や状況、世界的知名度のある原告側の商標と悪意性のある被告側の商標の事実や状況からみて、Potrich判事は当時の通説判例を覆し、原告の無効請求を認めた結果となった。以下、判旨の一部を引用する。
「本件に関わる条文の目的論上の解釈としては、ブラジル国内において競争関係をもたらす状況のために作ったものとわかりえるものである。ブラジル国内を焦点として、ブラジル特許庁で行われている権利化を定期的にモニタリングし、必要に応じて対応するものであると結論付けることができる。
しかしながら、原告は世界中で商品を販売している日本企業であり、その国際市場が創出する多様性を考慮すると、適切な時期での異議申立てを欠いていたとしても原告の無効請求を認めることは合理的と言える。」
本判決は、第一審ではあるものの、世界的にも有名な大企業が行政救済を取らずとも第三者の商標登録の無効を直接裁判所に訴えることを認めた、画期的な提訴判決である。
ブラジルにおける新しいモンサントに関する判決
リオグランデドスル控訴裁判所(TJ-RS)は、9月24日に多国籍バイオ化学メーカーであるモンサントにブラジルの農家からトランスジェニック大豆に関するロイヤリティを請求する権利を認める旨の判決を下した。控訴裁判所の第5室からの分かれた結論(“Split Decision”)によって、農家たちが「ラウンドアップ」に耐性を有する遺伝子組み換え大豆(ラウンドアップレディ技術)の使用からなる種子を売買したりすることに対してロヤルティの請求が妥当ではない旨の2012年に下された第一審判決が覆された。
本判決のレポーターの意見は、原告が主張したブラジル種苗法(法律9456/1997)の適用は不可能のことである。それでは、ブラジル特許法(法律9279/1996)が適用することで、モンサントはラウンドアップレディ技術に関する特許(PI 110008-2)が有効である限り、作付けし収穫することにより再生産する行為に対してロイヤリティを請求する権利が認められた。
2009年には、ブラジル南部地域によるのいくつかの農村労働組合は、特許権利の権利濫用によって不当な請求をしていることを主張して訴訟を提起した。特に、根拠としてはブラジル種苗法第10条を出し、当条文によればと農業者が作付けし収穫することにより再生産をし、その種子の寄付または交換が許される。2012年には、第一審においてポルトアレグレ地区第15民事法廷は判決が下され、大豆農家が2012年9月1日からロイヤルティ、技術料を払ったり、補償金を払うことなく、遺伝子組み換え大豆を保存し、再び畑に植え、その収穫物を食料として、あるいは原料として売る権利があることが認められた。また、2003/2004収穫から支払われたロイヤリティの金額を返金をモンサントに命じていた。
本決定の裁判所はまだ最終ではなく、より上級の裁判所に上告できる。
その判決は、ブラジルにおいてモンサントの特許活動に関する運の転向かもしれない。2013年にブラジル司法最高裁判所(STJ)は、モンサントの特許存続期間延長の主張を認めず、ラウンドアップレディ技術に関する特許は2010年8月31日に満了すると確認した。
また2013年に、ブラジルで最大の大豆の生産地であるマトグロッソ州連邦裁判所はモンサントが大豆生産農家に第二世代ラウンドアップ耐性大豆(RR2 Intacta)の取り引き条件を課すことを禁止する判決を下した。つまり、マトグロッソ州のみにおいて、モンサントが大豆農家たちに対していロイヤルティの徴収ができなくなった。この決定は、種苗法第10条及び消費者保護法に基づいて下された。
筆者はリオグランデドスル控訴裁判所の本判決の100頁以上を読んだけど、特許権利の消尽の議論が全くされなかったため残念だった。米国のBowman v. Monsanto最高裁判決と比較するのが簡単であろうが、根拠が少し異なる気がする。現在、ラジルが世界最大の大豆生産国であるため、この議論がまだ続くと予想することができるであろう。
ソース:TJ-RS
【ブラジル訴訟判例レポート】「仮差止め」と不正競争防止行為
概要:「仮差止め」ミニクーパー自動車と類似する他社の自動車に対する不正競争防止の主張
事件番号:
0152267-32.2012.8.19.0001(リオ・デ・ジャネイロ地方裁判所-商事部第6法廷)「第一審」
0036262-27.2012.8.19.0000(リオ・デ・ジャネイロ高等裁判所-第17法廷)「第二審」
判決言渡日:
2012年05月18日「第一審」
2012年07月10日「第二審」
原告:BMW DO BRASIL LTDA / BAYERISCHE MOTOREN WERKE AKTIENGESELLSCHAFT (以下に原告側を言う)
被告:EVER ELETRIC APPLIANCES INDUSTRIA E COMERCIO DE VEICULOS LTDA(被告1) / RIO ASIA MOTORS LTDA(被告2) (以下に被告側を言う)
権利番号: N/A 「不正競争」
要約:

「Lifan 320」 対 「ハッチバック」
被告1はブラジルにおける中国会社であるLifan Industry (Group) Company(力帆实业(集团)股份有限公司)の独占的なライセンシーであり、Lifanの商品を専用に製造し、流通している会社である。
被告2はLifanの自動車を販売している企業である。
Lifan社が2009年から「Lifan 320」と言う自動車を生産している。
「Lifan 320」はミニの「ハッチバック」に似たデザインで発売当時、物議があったようである。
2000年に原告であるBMW社がミニを買収し、「ハッチバック」に関する権利の譲受人である。
2012年04月13日に原告はブラジル産業財産権法の第195条第3項に基づき、「Lifan 320」の外見には「ハッチバック」の複数な特徴を使用しているため、全体的な外見の類似の範囲で混同の恐れが高いので、「Lifan 320」の販売は不正競争行為と認めるべきと主張した。
第195条第3項によりは自己又は他の者の利益のために、競争関係にある者の使用を損う詐欺的手段を用いることが不正競争行為とみなす。
「*筆者の意見で原告が「ハッチバック」に関する意匠権をブラジルで取っていないようである。筆者もデータベースに検索したが、何もみつけていない。」
原告が不正競争防止行為を差止する旨の請求し、混同が生じないために次の変更を求めていた。
(1)ラジエーターグリルの形の変更;
(2)屋上及びバックミラーをボディと同様な色を使用;
(3)自動車の色と違う色のストライプを使用しない;
(4)バックミラーの形の変更;
真似を証拠するために、様々な自動車専門雑誌の意見を提出した。
混同があると証拠するために、ブラジルで一番信用されているマーケティングリサーチ会社が集めたアンケートの結果を提出し、その結果によると、通常の顧客が連続的に一見して区別することができないということ。
また、ブラジル産業財産権法の第209条第1項により、裁判官は、回復不能又は回復が困難な損害を防止するため、必要であると思料するときには、保証金又は担保設定を通じ、同一訴訟の一件書類中において、被告の召喚前に、侵害又はこれに該当する行為停止の仮処分を設定することができる。
リオ・デ・ジャネイロ地方裁判所-商事部第6法廷の判事にとって、不正競争行為を認めた上で、原告の自動車のトレードドレスの稀釈化される可能性が高いため、回復が困難と判断した。
2012年05月18日に仮処分として、「Lifan 320」の輸入、販売、展示、流通、宣伝及び広告が禁じられた。
被告側がその判決に対して、不服申立のために中間控訴を提訴した。
そして、2012年07月10日にリオ・デ・ジャネイロ高等裁判所-第17法廷の判事が当該不正競争防止の明確性を低いと検討し、回復が可能と判断したため、仮差止を引き返した。
2012年7月20日に至るまでの状況となる。
【ブラジル訴訟判例レポート】修理用部品に関する意匠権
概要:「Must Match修理用部品意匠」の意匠権についての権利効力の成否
事件番号:2010.51.01.809326-0(リオ・デ・ジャネイロ連邦裁判所【第一審】)
判決言渡日:2012年05月14日
原告:ORGUS IND/ COM/ LTDA(オルグス有限会社)
被告:FORD MOTOR COMPANY BRASIL LTDA (被告1)、FORD MOTOR COMPANY (被告2)、FORD GLOBAL TECHNOLOGIES (被告3)(以下にフォード社)、ブラジル特許庁(被告4*)
意匠権番号:
バンパ:DI 6202793-0; DI 6404267-7; DI 6602725-0; DI 6700351-6, DI 6703283-4, DI 6705052-3, DI 6705048-4, DI 6800356-0, DI 6800310-2, DI 6800329-3, DI 6800341-2, DI 6805684-2, DI 6805676-1, DI 6901718-2, DI 6901947-9 及び DI 69902722-6
ヘッドライト:DI 6200348-8; DI 6200350-0; DI 6202798-0; DI 7202799-9; DI 6303045-4; DI 6404266-9; DI 6404443-2; DI 6602715-2; DI 6602717-9; DI 6700465-2; DI 6703285-0; DI 6703292-3; DI 6703863-8; DI 6705054-9; DI 6800326-9; DI 6800328-5; DI 6800330-7; DI 6800349-8; DI 6800402-8; DI 6801019-2; DI 6801020-6; DI 6804515-8; DI 6804521-2; DI 6805675-3; DI 6901945-2; DI 6902720-0; DI 6902724-2; DI 6902728-5; DI 7000235-5; DI 7000240-1 及び DI 7000254-1
要約:
皆様のご存知通りに、「Must Match修理用部品」についての制限がないため、日本では新規性、創作非容易性、及びその他の意匠法上の意匠登録の要件を満たしたら、意匠を登録することがでる。そして権利効力についても制限がないので、権利行使もすることができる。一方で、欧州共同体意匠規則や英国により「Must Match修理用部品」に関する意匠についての登録あるいは権利効力の制限がある。
ブラジルでは残業財産権法上でMust Match修理用部品」に関する意匠についての登録制限がないため、登録要件を充足していれば権利化することができる。
当該判決で「Must Match修理用部品」に関する意匠は登録要件を満たすことができるか否かを判断した。
論点を簡単にまとめていたら判断は2重レベルで行い、1つ目のレベルは産業財産権法の解釈についての判断、2つ目は憲法上の自由競争についての判断になった。
産業財産権法の解釈について、以下の意見が取り上げられた。
1)自動車全体という装飾的結合の一部となるMust Match修理用部品が装飾的に自動車から区別できず、第95条が掲げる登録を受けることができる意匠に該当しない;
2)Must Match修理用部品の形態は技術及び機能の見地から不可欠とみなされる形状なので、第100条1項II号により意匠として登録を受けることができない;
憲法上の自由競争についての判断に当たり、以下の論点
1)ブラジル憲法第5条XXIX号により知的財産の保護は「社会的利益並びに国の技術的及び経済的発展を考慮」しなければならない。
2)被告側(フォード社)の意匠は機能性が高いため、意匠権を与えて修理目的の修理用部品の使用を妨げることになる。それで、消費者が修理をするところに選択の幅が不当に制限され、自由な競争関係を害してしまうことになるから、憲法第170条で定めている経済秩序の原則として自由競争(第IV号)と消費者保護(第V号)の原則を違反している。
結果としてフォード社のバンパについて31件とヘッドライトについて16件が無効になった。
しかし、注意して頂きたいところは今回のケース「2010.51.01.809326-0」号は未だ第一審としての判決ですので、GUILHERME BOLLORINI PEREIRA判事の判断は最終的な意見ではなく未だ破棄される可能性がある。このケースについて既に控訴の訴えが提出された。
カラペト・ホベルト
追伸【*もし無効とされたら、この命令を従わないといけないのはブラジル特許庁なので、必要的共同訴訟者となる】